住宅省エネルギー基準メモ

省エネルギー基準(省エネ基準)に関する私的メモです。 私的なメモですが省エネ基準に関する情報を共有できればと思い、ブログとして公開いたします。 情報の共有が目的なので、情報が間違っていたり、解釈が正しくない場合は、コメントなどでご指摘いただけると助かります。

カテゴリ: 省エネルギー基準

省エネ基準はまず外皮の熱性能基準と一次エネルギー消費量基準があります。

外皮基準には外皮平均熱貫流率(UA値)冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)があります。

省エネ基準を評価する方法としては、標準計算簡易計算モデル住宅法仕様基準があり、それぞれ計算方法が異なります。

標準計算以外の計算方法は簡易的な方法になりますので、特に難しいものではありません。


標準計算は、各部位の面積、熱貫流率(U値)日射熱取得率(η値)などを計算しなければなりません。

標準計算は電卓で手計算も可能ですが、計算が複雑で計算量が多くなりますので、通常はExcelシートを使用するか、専用ソフトで計算するのが一般的です。

Excelシートは一般社団法人 住宅性能評価・表示協会(評価協)や国立研究開発法人 建築研究所(建研)などで公開しています。

専用ソフトはWindows用の市販ソフトやフリーソフト、Webアプリなどがあります。


従来は計算される方が自分で計算しやすいようにExcelシートを作成していた人が多かったように思います。

現在は評価協などでExcelシートが公開されていますのでこれを利用していたり、または自分が使いやすいように改良していたりしているようです。


計算業務を請け負っている業者や計算回数が多い会社では、市販の専用ソフトを購入して使用しているところが多いと思います。

専用ソフトは短時間で計算することができますが、その分コストはかかります。

最近は専用ソフトのフリーソフト(無料ソフト)や窓メーカーなどでWebアプリが公開されています。

これらも省エネ基準を計算するための専用ソフトですので、計算を簡略化できます。


市販の専用ソフトは高額でちょっと試してみたい場合や使用頻度が少ない場合は敷居が高くなりますので、無料のものから試してみてはいかがでしょうか。


省エネルギー基準(省エネ基準)


設計図書の準備
寸法が書かれている図面や、断熱仕様や窓・ドアの仕様がわかる仕様書などを準備します。

熱的境界の確認
熱的境界とは外と中を分ける境界面です。
通常は断熱材の入っている面が熱的境界になります。
たとえば天井断熱の場合は天井が、屋根断熱の場合は屋根が熱的境界になります。



部位分け
省エネ基準では、外壁や天井、床など部位によって計算に使用する係数が変わったり、式が変わったりすることがあります。
そのため、熱的境界に沿って部位分けを行います。
部位の種類は以下の通りです。
  • 外壁
  • 天井
  • 屋根
  • 土間床
  • 基礎断熱
  • ・ドア
天井断熱の場合は屋根を考慮する必要はありません。
また、基礎断熱の場合は床は考慮する必要はありません。
どの部位が熱的境界になっているかで、取り扱う部位が変わってきます。

なお、同じ部位でも断熱仕様が異なる場合は分けなければなりません。
たとえば、外壁でも断熱材の厚さや種類が変わる部分がある場合は、それらは分ける必要があります。

方位分け
外皮平均熱貫流率を計算する場合は方位を分ける必要はありませんが、平均日射熱取得率を計算する場合は方位を分ける必要があります。
そのため、外壁ドアは方位ごとに分けます。
方位は8方位に分けます。
なお、天井、屋根、床に方位はありません。

面積計算
部位分け・方位分けが終了しましたら、分けたごとに面積を計算します。
外壁などは全体の面積から窓・ドアの面積を引いた実面積を計算します。

外皮平均熱貫流率、冷房期の平均日射熱取得率の計算
外皮平均熱貫流率、冷房期の平均日射熱取得率を計算します。
基準がある地域では基準値と比較して基準をクリアしているかを確認します。
外皮平均熱貫流率、平均日射熱取得率の計算方法や基準値については以下をご参照ください。

暖房期の平均日射熱取得率(ηAH値)の計算
暖房期の平均日射熱取得率に基準値はありませんが、一次エネルギー消費量を計算するときに必要なためこれも計算します。

一次エネルギー消費量を計算
一次エネルギー消費量を計算する場合は、外皮面積外皮平均熱貫流率冷房期・暖房期の平均日射熱取得率が必要になります。
一次エネルギー消費量を計算するプログラムがホームページ上に用意されています。

このプログラムに外皮平均熱貫流率などを入力し、各設備を選択・設定して一次エネルギー消費量を計算します。
そして基準をクリアしているかを確認します。

省エネルギー基準(省エネ基準)一次エネルギー消費量とは、住宅で使用する暖房や冷房、給湯などの使用エネルギーのことです。
太陽光発電やコージェネレーション設備による発電量も考慮することができます。

評価する項目には以下のものがあります。
  • 暖房設備
  • 冷房設備
  • 換気設備
  • 給湯設備
  • 照明設備
  • 家電等設備
  • エネルギー利用効率化設備による削減量
計算する場合は通常「国立研究開発法人 建築研究所」がインターネット上で公開している「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」を使用します。


ここで地域や床面積、外皮平均熱貫流率(UA値)冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)、暖房期の平均日射熱取得率(ηAH値)を入力し、暖冷房や給湯などの設備を選択していきます。
一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量以下であれば基準をクリアしたことになります。

一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割ったものをBEI(Building Energy Index)と言います。
建築物省エネルギー性能表示制度(BELS(ベルス))は、BEIの値によって省エネ性能を星の数で表します。
最も性能が高いのが星5つ、省エネ基準相当が星1つです。
(性能が高いほど星の数が多くなります)

外皮平均熱貫流率や平均日射熱取得率の計算には時間がかかりますが、これらをを計算してしまえば、基本的には住宅に設置する設備を選択することで設定していきますので、それほど難しいものではありません。
省エネ性能が高い設備は、多少専門知識が必要なものもありますが、これは設備メーカーに問い合わせることで対応できるのではないかと思います。

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算方法
平均日射熱取得率(ηA値)の計算方法

省エネ基準の基準をクリアしているかを判断する場合は外皮平均熱貫流率(UA値)冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)一次エネルギー消費量を計算します。

これらの計算方法は簡易なものから精緻なものまでいくつかの評価方法が用意されています。
  • 標準計算ルート
  • 簡易計算ルート
  • モデル住宅法
  • 仕様ルート
簡易計算ルート、モデル住宅法は新しく設けられた評価方法です。
仕様ルートを除けば、最も簡単な計算方法はモデル住宅法です。
モデル住宅法は計算シートが用意されていて、外壁や窓などの部位ごとに熱貫流率(U値)日射熱取得率(η値)を記入して、計算シートにある係数をかけて計算します。
熱貫流率や日射熱取得率は断熱材メーカーや窓メーカーなどで用意されていれば、それを利用することができます。
そのため、単純な計算で求めることができます。

最も計算が難しいのが標準計算ルートです。
標準計算ルートは、各部位の熱貫流率や日射熱取得率を自分で計算します。
また、面積や長さも計算する必要があります。
特に柱などの木材熱橋やRC造の構造熱橋、窓の取得日射量補正係数などの計算は非常に複雑なので計算に時間がかかります。

本来であれば標準計算ルートで計算すべきです。
標準計算ルートは計算は難しくなりますが、その分精緻な計算になります。
そのため、実際の住宅の性能を正確に判断することができます。
ただ、計算に時間がかかるのが難点です。

一方モデル住宅法などの簡易な計算では、簡単で短時間に計算できます。
ただし、簡易な計算方法なので、正しい性能を判断できない可能性があります。
また、計算が簡易な分安全側で計算されるため、住宅によっては基準をクリアしづらくなるという欠点があります。
また、モデル住宅法は住宅トップランナー制度、住宅性能表示制度などの制度には利用できません。

平均日射熱取得率(ηA値)とは、住宅に入る日射熱を表す数値です。
平均日射熱取得率には冷房期(ηAC値)暖房期(ηAH値)があります。
冷房期は日射を遮る(日射遮蔽)ことで省エネになりますし、暖房期は日射を入れる(日射取得)ことで省エネになります。

平均日射熱取得率は冷房期のみ基準値が設けられていて、暖房期に基準値はありません。
暖房期の平均日射熱取得率は一次エネルギー消費量を計算するときに必要になります。

冷房期の平均日射熱取得率は地域ごとに基準値が設けられていますが、1~4地域は基準値がありません。
1~4地域は北海道や東北などの寒冷な地域です。
基準値は暖かい地域ほど厳しくなっています。

計算についてはこちらをご参照ください。
平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値) 

また、詳細な計算方法についてはこちらをご参照ください。
平均日射熱取得率の計算方法

計算方法を簡単に説明しますと、以下の手順になります。
  1. ガラスの日射熱取得率(η値)を確認する
  2. 窓の取得日射量補正係数を計算する
  3. 窓以外の部位は熱貫流率(U値)を計算し日射熱取得率を計算する
  4. 日射熱取得量を計算する
  5. 各部位の日射熱取得量を合計する
  6. 外皮面積を計算する
  7. 各部位の外皮面積を合計する
  8. 日射熱取得量の合計を外皮面積の合計で割る
平均日射熱取得率を計算する場合、窓と窓以外で計算方法が大きく異なります。
窓は取得日射量補正係数を計算するため計算量が非常に多くなります。
また、外皮平均熱貫流率は方位を分ける必要がありませんが、平均日射熱取得率は方位ごとに係数が変わるため方位別に計算する必要があります。

冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)の基準値ですが、2019年11月に地域区分が見直されています。
(2021年3月末まで経過措置として旧地域区分を使用することができます)
また、8地域の基準値は2020年4月に6.7に変更になっています。

2021年4月から省エネ性能の説明義務制度が始まりますが、平均日射熱取得率の計算方法も2021年4月から計算方法が変更になる予定のようです。
現在のところ変更点の詳細については公表されていませんが、説明義務制度が始まったと同時に変更になるようなので注意が必要です。

平均日射熱取得率(ηA値)の計算方法

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