住宅省エネルギー基準メモ

省エネルギー基準(省エネ基準)に関する私的メモです。 私的なメモですが省エネ基準に関する情報を共有できればと思い、ブログとして公開いたします。 情報の共有が目的なので、情報が間違っていたり、解釈が正しくない場合は、コメントなどでご指摘いただけると助かります。

2015年04月

ここまで外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例についご説明してきましたので、ここでまとめておきたいと思います。

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例 
外皮平均熱貫流率の計算の概要

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例1
熱伝導率(λ値)、熱抵抗値(R値)

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例2
表面熱伝達抵抗、熱貫流率(U値)

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例3
面積

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例4
温度差係数、熱損失量

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算方法

平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値)の計算方法

省エネルギー基準(省エネ基準)


外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例5
窓・ドアの熱貫流率(U値)

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例6
土間床・基礎断熱の熱貫流率

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例7
土間床・基礎断熱の熱損失量、土間床・基礎断熱の外皮面積

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例8
各部位の熱損失量を合計、外皮面積を合計

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例9
外皮平均熱貫流率(UA値)

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算例10
省エネルギー基準の基準値と比較

木造住宅の充填断熱の熱貫流率を計算する

平均熱貫流率を計算する

木造軸組構法の充填断熱では胴差を考慮する

床断熱の計算

合板や内装材を考慮して熱貫流率を計算する

複合断熱の熱貫流率を計算する

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算は難しくない

 ここまで外皮平均熱貫流率(UA値)の計算についてご説明してきました。
 外皮平均熱貫流率の計算は時間はかかりますが、ポイントさえ抑えてしまえば、計算自体は難しくありません。

 まず、以下の外皮平均熱貫流率の簡略式を覚えましょう。
 
各部位の熱損失量
 [熱損失量] = [温度差係数] × [面積] × [熱貫流率]

外皮平均熱貫流率
 [外皮平均熱貫流率] = [各部位の熱損失量の合計] ÷ [外皮面積]

 温度差係数は戸建て住宅なら1か0.7です。
 面積計算は住宅によって異なるため省略することはできません。

 外皮平均熱貫流率の計算の中で、一番大変なのは熱貫流率(U値)の計算です。
 ただ、熱貫流率は一度計算すると、同じ断熱仕様であれば再利用することができます。つまり熱貫流率の計算を蓄積していくほど、外皮平均熱貫流率の計算は楽になります。

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算方法

平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値)の計算方法

省エネルギー基準(省エネ基準)

 前回は断熱材以外の材料として合板と内装材を考慮して計算しましたが、充填断熱に外張断熱を付加する複合断熱の場合も同様に計算することができます。

 前回の計算に外張断熱を付加してみましょう。
 外張断熱の断熱材は押出法ポリスチレンフォーム保温板3種としますと、熱伝導率は0.028(W/mK)です。厚さは45mmとします。
 熱抵抗値(R値)の計算式は、[厚さ] ÷ [熱伝導率]ですから、外張断熱の熱抵抗値を計算しますと、0.045 ÷ 0.028 = 1.607(m2K/W)になります。

 次に、充填断熱の断熱部と柱部の熱貫流率(U値)を計算します。
 断熱部の計算式は以下の通りです
 [熱貫流率] = 1 ÷ ([外気側表面熱伝達抵抗] + [外張断熱の熱抵抗値] + [合板の熱抵抗値] + [充填断熱の熱抵抗値] + [内装材の熱抵抗値] + [室内側表面熱伝達抵抗])
 計算しますと以下のようになります。
 1 ÷ (0.04 + 1.607 + 0.031 + 2.222 + 0.055 + 0.11) = 0.246(W/m2K)

 柱部の計算式は以下の通りです
 [熱貫流率] = 1 ÷ ([外気側表面熱伝達抵抗] + [外張断熱の熱抵抗値] + [合板の熱抵抗値] + [柱の熱抵抗値] + [内装材の熱抵抗値] + [室内側表面熱伝達抵抗])
1 ÷ (0.04 + 1.607 + 0.031 + 0.833 + 0.055 + 0.11) = 0.374(W/m2K)

 柱の面積比を17%として、それぞれの熱貫流率の平均熱貫流率を計算すると、以下のようになります。
 (0.246 × 0.83) + (0.374 × 0.17) = 0.268(W/m2K)

 このように、複合断熱の熱貫流率を計算する場合は、各部位材の熱抵抗値を合計して、平均熱貫流率を計算します。

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算方法

平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値)の計算方法

省エネルギー基準(省エネ基準)

 今までは断熱材のみを考慮してきましたが、ここでは外壁の構成部材である合板や内装材も考慮した熱貫流率(U値)を計算してみましょう。
 
 充填断熱としますと、基本的な計算方法は平均熱貫流率の計算方法と同様です。
 異なるのは、今までは熱貫流率計算時に断熱材のみの熱抵抗値(R値)を使用しましたが、これに合板と内装材の熱抵抗値を合計して熱貫流率を計算します。
 まず、それぞれの熱抵抗値を計算します。
 熱抵抗値の計算式は、[厚さ] ÷ [熱伝導率]です。

 合板の厚さが5(mm)、熱伝導率が0.160(W/mK)として、熱抵抗値を計算します。
 [合板の熱抵抗値] = 0.005 ÷ 0.160 = 0.031(m2K/W)

 断熱材の厚さが100(mm)、熱伝導率が0.045(W/mK)として、熱抵抗値を計算します。
 [断熱材の熱抵抗値] = 0.1 ÷ 0.045 = 2.222(m2K/W)

 内装材の厚さが12(mm)、熱伝導率が0.220(W/mK)として、熱抵抗値を計算します。
 [内装材の熱抵抗値] = 0.012 ÷ 0.220 = 0.055(m2K/W)

 これらの熱抵抗値を合計して、断熱部の熱貫流率の計算します。
 計算式は以下の通りです。
 [熱貫流率] = 1 ÷ ([外気側表面熱伝達抵抗] + [合板の熱抵抗値] + [断熱材の熱抵抗値] + [内装材の熱抵抗値] + [室内側表面熱伝達抵抗])

 計算しますと以下のようになります。
 1 ÷ (0.04 + 0.031 + 2.222 + 0.055 + 0.11) = 0.407(W/m2K)

 続いて柱部の熱貫流率を計算します。
 計算式は以下の通りです。 
 [熱貫流率] = 1 ÷ ([外気側表面熱伝達抵抗] + [合板の熱抵抗値] + [柱の熱抵抗値] + [内装材の熱抵抗値] + [室内側表面熱伝達抵抗])
 断熱部の計算式との違いは、[断熱材の熱抵抗値] が [柱の熱抵抗値] に置き換わっています。
 柱の熱抵抗値は、0.833(m2K/W)とします。
 柱部の熱貫流率を、断熱部と同様に計算しますと以下のようになります。
 1 ÷ (0.04 + 0.031 + 0.833 + 0.055 + 0.11) = 0.935(W/m2K)

 断熱部と柱部の熱貫流率がわかりましたので、平均熱貫流率を計算します。
 柱の面積比は17%としますと、以下のようになります。
 (0.407 × 0.83) + (0.935 × 0.17) = 0.50(W/m2K)

 このように複数層の部材を考慮する場合は、各部材の熱抵抗値を合計して、平均熱貫流率を計算します。

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算方法

平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値)の計算方法

省エネルギー基準(省エネ基準)

 計算例では、基礎断熱の住宅として計算しました。
 床断熱の住宅の場合は、基礎断熱とは異なり、床の熱貫流率(U値)熱損失量を計算します。

 床の熱貫流率・熱損失量の計算方法は、基本的に外壁と同様です。
 異なるのは、表面熱伝達抵抗、木材熱橋率、そして温度差係数です。
 表面熱伝達抵抗木材熱橋率は、省エネ基準の解説書で確認することができます。

 外壁は通常外気と接しているため、温度差係数は1になります。
 床断熱時の床は、床裏と接することになりますので、温度差係数は0.7になります。
 熱損失量の計算式は、[熱損失量] = [熱貫流率] × [温度差係数] × [面積] です。
 面積が54.21(m2)、熱貫流率が0.47(W/m2K)としますと、熱損失量は以下のようになります。
 0.47 × 0.7 × 54.21 = 17.84(W/K)

床断熱時の土間床
 床断熱でも、玄関や浴室などは通常土間床になります。
 この場合は、床断熱の部位と土間床の部位を分ける必要があります。
 土間床の計算方法は基礎断熱と同様です。これは前に説明しましたのでそちらをご参照ください。

 基礎断熱の計算と異なる点は温度差係数です。
 基礎断熱は外気と接しているため、温度差係数は1になります。
 玄関などの土間床は、外気側に接している部分と、床裏側に接している部分があります。
 床裏側に接している部分は、温度差係数が0.7になりますので注意してください。

外皮平均熱貫流率(UA値)の計算方法

平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値)の計算方法

省エネルギー基準(省エネ基準)

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